豊田市美術館
豊田市美術館
谷口吉生:設計
豊田市街地から少しだけ離れた小高い丘の緑の中にひっそりとたたずむ美術館。竣工は1995年。主に近代・現代美術を中心に企画展を行う。中から外まで建築系雑誌で撮影・紹介されているので詳細はそちらを参照してください。
オープン当初、企画された展覧会に興味を持ち、建築は二の次で訪れた、建築に多少興味を持っていた当時の私を圧倒した美術館。その後、修士論文でも取り上げるほど気に入っている建物の1つ。特に興味を持ったのは谷口吉生が“器”と表現する、その建築性。
樹々をぬけるアプローチから現前するそのファサードは周囲の緑に溶け込むくらい落ち着いた雰囲気。乾式で張られた床スレートの乾いた足音に少しの場所の変質を感じつつ入館。展示空間は企画展用の大空間のほかに常設用の小・中空間に分かれる。この中空間が特に面白い。階段や回廊とその開口から、立つ位置を変えて作品をまなざすことのできる展示空間。さらに、移動とともに次の、そして通り過ぎた展示室をまなざすことができる連続性。展示作品を楽しむのに十分な空間性。
美術館建築として自己主張しすぎずに、展示作品を見るための様々な工夫を楽しめる美術館です。名古屋からの公共交通がそれほど便利でないのが難点といえば難点。